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徳島地方裁判所 昭和28年(行)3号・昭28年(行)4号 判決

原告 松田直一 外二名

被告 三山村選挙管理委員会

一、主  文

被告(昭和二十八年(行)第三号)が昭和二十八年五月十三日三山村長解職請求者署名簿の署名の内川端佐平、北岡マスエ、藤野憲一、たけだきく、桑野又太郎、武田シゲ子、松田安江の各署名を有効と決定した処分はこれを取消す。

被告(昭二十八年(行)第四号)が同日三山村議会解散請求者署名簿の署名の内川端佐平、北岡マスヱ、たけだきく、武田シゲ子、浅尾儀一、松田安江、浅尾幾三郎、浅尾節子の各署名を有効と決定した処分はこれを取消す。

原告等の其の余の請求はいづれもこれを棄却する。

訴訟費用中昭和二八年(行)第三号事件に要したものは原告松田直一の負担とし、同年(行)第四号事件に要したものは原告工藤俊助、同佃安夫の負担とする。

二、事  実

原告松田直一は「被告(昭和二十八年(行)第三号)が昭和二十八年五月十三日三山村長解職請求者署名簿の署名のうち四百九十名の署名を有効と決定した処分はこれを取消す、訴訟費用は同被告の負担とする。」との判決を、原告工藤俊助、同佃安夫は「被告(昭和二十八年(行)第三号)が昭和二十八年五月十三日三山村議会解散請求者署名簿の署名のうち、四百九十名の署名を有効と決定した処分はこれを取消す、訴訟費用は同被告の負担とする。」との判決を求め、その請求の原因として原告松田直一は麻植郡三山村の村長であるが、被告(昭和二十八年(行)第三号)は同年五月十七日三山村長の解職請求を受理した旨の通知書を、同月二十三日原告松田直一に交付したが、同被告が同月十三日有効と決定した前記署名簿の署名中には別紙一記載の通り無効の署名が含まれているので右無効の署名を有効と決定した前記処分の取消を求めるため本訴に及んだと述べ原告工藤俊助、同佃安夫は三山村議会の議員であるが、被告(昭和二十八年(行)第四号)は同月十七日三山村議会解散請求を受理した旨の通知書を同月二十三日同議会議長に交付したが、同被告が同月十三日有効と決定した前記署名簿の署名中には別紙二記載の通り無効の署名が含まれているので、右無効の署名を有効と決定した前記処分の取消を求めるため本訴に及んだと述べ、なお原告等は三山村における有権者総数は千四百四十三名であり各署名簿の有効なるべき法定数は四百八十一名であるところ被告が有効と決定した数は右を越えること九名に過ぎないと釈明した(立証省略)。

被告(昭和二十八年(行)第三号、同年(行)第四号)代表者は「原告等の請求はいづれもこれを棄却する。訴訟費用は原告等の負担とする。」との判決を求め、答弁として原告松田直一の請求原因事実に対しては別紙三記載の通り原告工藤俊助、同佃安夫の請求原因事実に対しては別紙四記載の通り陳述した(立証省略)。

三、理  由

第一、原告松田直一が其の無効を主張する別紙一記載の者等の署名の効力について

別紙一記載の各署名の有効か否かの点を除く其の余の事実については当事者間に争いが無いから以下別紙一記載の順序を逐つて各署名の効力を判断する。

一、証人川端佐平の証言によれば、同人の署名が自署であることは認められるが、同人の署名は単に署名すれば村民のためになると思つてしたもので、村長解職を意識してなされたものではないことが認められるから、此の点で同人の署名は無効とすべきものである。次に証人たけだきくの証言によれば同人は署名の趣旨が全然わからないのに、署名収集者の求めにより漫然と署名したもので、もとより村長解職の意思に基いたものでないことが認められるから同人の署名は無効のものとなすべきである。

二、証人近藤亟平の証言によれば同人は署名収集者から村長解職請求のための署名である旨を説明され、同人も右の意思で署名したことが認められるから右署名は有効とすべきものである。次に証人浅尾弘の証言によれば同人は村長解職の意思で署名したことが認められるから右署名は有効とすべきである。また杉村覚吉、松原豊、松原久子等の各署名が署名収集者等の請求要旨の詐偽説明に因る事実については何等の証拠も無いから同人等の署名も亦いづれも有効とすべきである。

三、証人川端忠平、同明石キミ、同住友イクヱの各証言によれば同人等の署名はいづれも自署であることが認められ、証人明石アサノ、同矢田ツルカ、同竹本ツネ子の各証言及び鑑定人田中繁夫の鑑定の結果によれば、同人等の署名はいづれも自署であることが認められるから右川端忠平外五名の各署名はいづれも有効とすべきものである。次に同鑑定人の鑑定の結果によれば松田安江の署名は自署ではないことが認められる。右認定に反する証人松田安江の証言は之れを措信しない。また証人武田シゲ子、同北岡マスヱの各証言によれば同人等の署名は各自署であることは認められるが、同人等は署名の趣旨が全然分らずに署名したことが認められ、従つて同人等の署名は村長解職の意思に基かないものと認められるから右松田安江外二名の署名はいづれも無効のものとなすべきである。高橋善平の署名が自署でないことについては証拠が無いから、これを有効とし、たけだきくの署名については既に一、で判断した。

四、証人久保熊一、同久保豊の各証言によれば久保熊一は署名の際、認印を持合わせていなかつたので久保豊の印鑑を借りて押捺したことが認められる。しかし他人の印鑑であつても、これを自己の印として使用する意思で借受け押捺したような場合は、自己の印鑑を押捺した場合と同一視してもよいと考えられるから、右久保熊一の署名は有効とすべきであり、また久保フジ子が他人の印鑑を使用した事実については証拠が無いから同人の署名も有効とすべきである。

五、証人杉村賀久、同寒川春一、同久保熊一の各証言によれば同人等の署名はいづれも自署であることが認められるから右署名はいづれも有効であり、住友イクエの署名については既に三、で判断した。証人杉村亨子同寒川幸子の各証言及び鑑定人田中繁夫の鑑定の結果によれば、同人等の署名は各自署であることが認められるからいづれも有効であり、また大蔭茂外三十四名の署名が自署でないことについては、何等証拠が無いから、各自署とする外なく、同人等の署名はいづれも有効である。

六、天田彦兵衛、天田定、藤原啓夫、藤原フミ子、藤原春子、堀本カメヨ、堀本トシ子等の印影は検証の結果不鮮明であることは認められるが、全然印影不明の程度ではないから右署名はいづれも有効となすべきである。

七、証人小谷アサ子、同近藤茂芳(訴状に茂義とあるは誤記と思う)同松家シマノ、同猪井タケノ、同猪井シマ子、同川端トミヱ、同武田マサヲ、同藤野晴一、同藤原基太郎、同藤野キミヱの各証言によれば同人等はいづれも村長を解職する意思で署名したことは認められるが、署名収集者等が同人等に対し、諸種の圧迫を加えた結果同人等が自己の意思に基かず、止むを得ず署名した事実は認められないから、同人等の署名はいづれも有効である。桑野又太郎の署名についても同人の証言によれば、其の署名は自己の自由意思に基いてなしたことは認められるが、しかし同人の署名が署名収集者でない住友才助によつて収集されたことは争いが無く他に住友才助が収集の正当権限あることの証拠がないから、右署名は此の瑕疵によつて無効とすべきものである。藤野憲一の署名については、同証人の証言によれば、強迫に基くものであることは認められないが、署名収集者が同人に対し、村長が勝手な場所に新制中学を建築したため補助金が支給されず村民にその負担がかゝるからと説明し、同人は署名は右補助金の支給を受けるためのものと信じて署名したこと、即ち署名収集者の請求要旨の詐偽説明に基くものであることが認められるから右署名は無効とすべきである。武田シゲ子の署名については既に三、で判断した。杉村惣兵衛外二十六名の署名が強迫に基くものであるという点については何等の証拠も無いから同人等の署名は有効とすべきである。

八、桑野又太郎の署名については既に七、で判断した。

第二、原告工藤俊助、同佃安夫が其の無効を主張する別紙二記載の者等の署名の効力について

別紙二記載の者等の署名の有効か否かの点を除く其の余の事実については当事者間に争いが無いから以下別紙二記載の順序に従つて各署名の効力を判断する。

一、川端佐平及びたけだきくの署名は第一の一に述べた理由と同趣旨によつて無効である。

二、近藤亟平、杉友覚吉、松原豊、松原久子、浅尾弘の各署名がいづれも有効であることは第一の二で判断したのと同様である。松原春子の署名が請求要旨の詐欺説明に基くものであるという点については証拠が無いから、右署名は有効とすべきである。

三、川端忠平、明石アサノ、明石キミ、高橋善平、竹本ツネ子、住友イクヱ、矢田ツルカの各署名が有効であること及び松田安江、北岡マスヱ、武田シゲ子(訴状にたけだシゲ子とあるが武田シゲ子のことゝ思う)の各署名が無効であることについては既に第一の三で判断したのと同様である。

四、証人久保豊の証言によれば同人は自己の印鑑を押捺していることが認められ、林ハナヱ、川崎ハルの両名が他人の印鑑を押捺しているという点については証拠が無いから夫々自己の印鑑と解する外なく、従つて右三名の署名はいづれも有効とすべきである。

五、鑑定人田中繁夫の鑑定の結果によれば松田安江の署名は自署でないことが認められるから、右署名は無効とすべきである。右認定に反する証人松田安江の証言は措信しない。証人浅尾サイカ、同武田マサヲ、同佐藤長十郎、同寒川幸子、同杉村亨子の各証言竝に鑑定人田中繁夫の鑑定の結果を綜合すれば、同証人等の署名はいづれも自署と認められるから右署名はすべて有効とすべきであり、武田シゲ子の署名が無効であることは既に第一の三で判断した通りであり、証人浅尾儀一、同浅尾節子の各証言によれば、同人等の署名がいづれも自署であることは認められるが、しかし同人等は署名に際し何の為に署名するのか分らないのに、署名を求められるまゝ漫然と署名したことが認められる。即ち同人等の署名は村議会解散請求の意思に基く署名とは認められないから、此の点で右署名はいづれも無効のものであり、証人浅尾幾三郎の証言によれば同人の署名も亦自署であることが認められるが、しかし右証言から同人に対し署名収集者から請求要旨について何の説明もなく同人は国勢調査かと思つて署名したものであること、即ち同人は明かに村議会解散請求の意思に基かないで署名したことが認められるから此の瑕疵によつて右署名は無効とすべきである。また証人住友イクヱ、同佐藤稔夫、同佐藤ユキ子、同浅尾ハン、同浅尾豊、同武田弘、同佐藤経義、同寒川春一、同杉村賀久の各証言によれば同人等の署名はいづれも自署であることが認められるから右署名はいづれも有効とすべきであり、浅尾徳三郎外六十二名の署名が自署でないことについては立証がないから、右署名はいづれも自署と解する外なく有効とすべきものである。

六、荘田正雄、明石スワノ、林要、天田彦兵衛、天田定、堀本カメヨ、堀本利子、藤原基太郎、藤原フサノ、藤原安子、藤原筆夫、フジハラフミ子、藤原春子等の印影は、検証の結果、いづれも不鮮明であることは認められるが、全然不明という程でないことが認められるから右署名はいづれも有効となすべきである。

七、証人近藤亟平、同浅尾弘、同藤野晴一の各証言によれば同人等が前記署名簿に署名するに際して署名収集者等から強迫を受け、止むを得ずして署名した事実は認められず、むしろ同人等は村議会解散請求の意思で署名したことが認められるから右署名はいづれも有効とすべきである。証人浅尾幾三郎、同浅尾節子の各証言によれば同人等も署名に際し強迫を受けた事実は認められないが右両名の署名は他の理由によつて無効であることは既に五、で判断した通りである。前記五名を除いた近藤一平外四十二名の署名が強迫に基く署名であるという点については立証が無いから右署名はいづれも署名者の自由意思に基く署名と解すべきで、従つていづれも有効とすべきものである。

右に判断したところによれば、結局原告松田直一が其の無効を主張する別紙一記載の者等の署名中、川端佐平、北岡マスヱ、藤野憲一、たけだきく、桑野又太郎、武田シゲ子、松田安江等の署名のみが無効であり、其の余はすべて有効であるから、同原告の本訴請求中右七名の署名を有効と決定した被告(昭和二十八年(行)第三号)の処分の取消を求める部分に限り理由が有るから正当としてこれを認容し、其の余の請求は失当であるからこれを棄却すべく、原告工藤俊助、同佃安夫が其の無効を主張する別紙二記載の者等の署名中川端佐平、北岡マスヱ、たけだきく、武田シグ子、浅尾儀一、松田安江、浅尾幾三郎、浅尾節子等の署名のみが無効であり其の余はすべて有効であるから同原告等の本訴請求中、右八名の署名を有効と決定した被告(昭和二十八年(行)第四号)の処分の取消を求める部分に限り理由があるから正当としてこれを認容し、其の余の請求は失当であるからこれを棄却すべきものである。

仍て訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九五条第八九条第九二条を適用して主文の通り判決する。

(裁判官 今谷健一 小川豪 白井守夫)

(別紙目録省略)

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